前回の記事では、ERPを導入することで、売上・仕入れ・人件費のリアルタイム可視化や会計処理・給与計算の自動化が可能になる ことをお伝えしました。今回は、さらに踏み込んで「戦略」について考えていきます。
現在、A社長のイタリアンレストランは1店舗あたりの売上が月500万円 とのことですが、ERPを導入すると、この500万円をより深く分析し、成長のための具体的な戦略を立てることができます。売上の構造を分解し、どこに改善の余地があるのかを明らかにすることがERPの真の強みです。
ERPで売上500万円の構造を見える化する
A社長の現在の売上(1店舗500万円)は、どのような要素で構成されているのか?
これをデータで分解すると、次のような項目に整理できます。
- 来店客数(客単価 × 客数)
- 来店ルート(予約経路:Instagram・ホームページ・電話)
- 注文内容(メニュー別売上・利益率)
- 時間帯別売上(ランチ・ディナーの比率)
- リピーター比率(新規 vs. リピーター)
実際、来店客の一人当たりのレシートを合計しても、日々の売上を合計しても、メニュー別・時間帯別・曜日別・年齢別・集客ルート別に売上を合計しても、最終的には月の売上500万円と一致します。
A社長: 「なるほど。今までは、店舗全体の売上しか見ていなかったので、どこを改善すればいいのかよく分かりませんでした。」
私たち: 「これまでの会計事務所が出してくる試算表の月売上500万円を見て、『売上を上げましょう』『下がったから対策を考えましょう』と言われても、それだけでは具体的な経営の計画にならない んです。」
A社長: 「それはどういうことですか?」
私たち: 「例えば、試算表の売上500万円が下がったときに、『国語の成績が下がったから国語を頑張りましょう』と言われるのと同じで、何をどうすれば成績が上がるのかが分からない状態と同じなんです。」
A社長: 「確かに、売上を上げたいと思っても、具体的にどこを改善すればいいのかが分からないですね。」
私たち: 「だからこそ、社長の『こんなお客様に、こんな料理を提供して、こんな売上にしたい』という戦略が、実際に思い通りに実現できているのかを検証する必要があるんです。」
A社長: 「なるほど、私が考えている理想の店舗運営が、実際にどうなっているのかをデータで確かめるんですね。」
私たち: 「そうです。それが『見える化』です。そして、集客ルート・売上・粗利の構造分析が何よりも重要になってきます。」
① 来店客数を増やす:集客ルートを最適化
A社長のレストランでは、Instagram・ホームページ・電話予約 の3つの方法で予約を受け付けています。しかし、どの予約ルートが最も売上に貢献しているのかは、まだ正確に把握されていません。
ERPでできること
- 予約経路別の売上・客単価・リピーター率を可視化
- 最も利益を生み出している集客ルートを特定
- 効果の低い広告・集客手法を見直し、コストを最適化
② 客単価を上げる:売れ筋メニュー・利益率の分析
売上を増やすもう一つの方法は、「客単価」を上げることです。
ERPを導入すると、どのメニューが最も利益を生んでいるか、逆にどのメニューが原価率が高すぎるのか をリアルタイムで把握できます。
ERPでできること
- メニュー別売上・原価率を可視化し、利益率の低い商品を見直す
- セットメニューの組み合わせを最適化し、客単価を向上させる
- 高利益率のメニューを重点的にプロモーションする
③ 未来の経営戦略をシミュレーション
ERPは単なる分析ツールではなく、売上の構造のどこを直せば、どのように変化するのかをシミュレーションする機能も備えています。
さらに、そのシミュレーション結果を、決算見込みや今後3年間の月次損益計算書へと展開できるのです。
私たち: 「例えば、客単価を10%上げた場合、集客ルートを最適化した場合、営業時間を調整した場合など、さまざまな要因を組み合わせたシミュレーションを行うことで、どの施策が最も効果的なのかを事前に把握できます。」
A社長: 「つまり、行き当たりばったりの施策ではなく、具体的なデータと予測を基にした戦略的な経営ができる ということですね。」
私たち: 「そうです。そして、ERPを使って初めて、試算表(会計データ)が『結果』として生きてくる んです。」
まとめ:データが語る「次の一手」
ERPを導入すると、今まで感覚で経営していた部分をデータに基づいて明確に分析 できるようになります。
ERPによる売上改善のポイント
- 予約経路の分析で、最も効果的な集客施策を実施
- メニュー別の利益率を可視化し、客単価を上げる施策を考案
- 曜日・時間帯ごとの売上分析で、最適なプロモーションを計画
- リピーターを増やす施策をデータに基づいて実行
- 構造分析とシミュレーションを活用し、未来の損益計算を最適化
A社長: 「試算表だけではなく、戦略の実行とその結果をシミュレーションしながら、最適な経営判断ができるようになる ということですね。」
私たち: 「まさにその通りです。『データが語る次の一手』を見つけて、最適な戦略を実行できるようになります。」
次のステップでは、「日々の意思決定を支援 5選」 についてご紹介します。
ERPを活用することで、毎日の経営判断がどのように変わるのか、具体的な事例を交えて解説していきます!