経営企画室は企業の未来を創るために、単なる経営管理ではなく、未来を見据えた戦略を立案し、実行することが求められます。特に、人口減少社会や市場環境の変化に適応し、持続可能な成長を実現するためには、長期的視点での戦略が不可欠です。本章では、経営企画室が未来を創るための3つのステップについて解説します。
1. 未来のビジョンを明確にする
未来のビジョンを明確にするためには、現在の会社がどこに向かっているのかを明らかにし、人口減少や市場縮小の影響を長期的視点で捉えることが重要です。その上で、自社の強みや課題を明確にし、ビジョンを具体化します。
現在会社が向かっている方向を明確に表す
- 現状の売上構成、利益構造、主要顧客層、事業展開の方向性を可視化し、このまま進んだ場合に会社がどうなるのかを分析。
- 状維持の延長線で企業の未来を描くのではなく、「このままでよいのか?」という視点で方向性を再確認する。
人口減少社会が地域と現在のマーケットに及ぼす影響を長期的視点から調べる
- 人口減少がもたらす消費の変化や、産業構造の変化をデータ分析し、自社のビジネスにどのような影響が出るかを予測する。
- 地方市場と都市市場の変化を比較し、どの市場でどのような戦略を取るべきかを判断する。
わが社の経営資源を長期的視点から分析し課題を抽出する
- 自社の人的資源・技術資源・財務資源を長期的視点で見直し、未来に向けた不足部分や課題を明確にする。
- 競争優位性を維持・強化するために、何が必要なのかを洗い出す。
社員さんの現在と将来に関するヒヤリングを行う
- 現場の社員が今抱えている課題、将来への不安や希望をヒアリングし、経営企画のビジョンとすり合わせる。
- 経営戦略が単なる数字の計画ではなく、社員のキャリアビジョンや働き方の変化とも連動するものにする。
2. 戦略を立案し、実行計画を作る
未来のビジョンを実現するためには、戦略を立案し、それを具体的な行動計画へと落とし込むことが必要です。経営企画室は、仮説を立てながら戦略を検討し、具体的な計画を策定します。
仮説に基づく戦略を調査しながら固めていく
- 市場の変化や競争環境を分析しながら、仮説を立てて戦略の方向性を探る。
- 競合の成功事例や異業種の動向を調査し、自社に適用可能な戦略を模索する。
戦略を売上粗利のマトリクスと戦術の想定組織図、組織風土計画、評価(損益計算書)で表す
- 戦略が単なるスローガンで終わらないよう、数値データと組織運営の視点を組み合わせて具体化する。
- 売上粗利のマトリクス(どの事業でどのように利益を生み出すのか)を明確にし、それに基づいた組織設計を行う。
- 組織風土の変革計画を作成し、新たなビジョンに沿った社内文化を醸成する。
- 戦略の成果を評価するために、財務指標や組織KPI(重要業績評価指標)を策定し、測定可能な形で管理する。
- 想定組織図の説明は特に丁寧に社員さんに行うことが大切です。
新規事業が必要な場合にはその計画を立案する
- 現在の事業環境において成長が見込めない場合、新規事業の必要性を検討し、適切な市場を選定する。
- 新規事業におけるリスク分析を行い、投資計画とリターンの見込みを明確にする。
- 新規事業の立ち上げに必要なリソース(人材・技術・資金)を計画し、段階的に進める。
その他戦略を実行するためにツール(ERPやAIの活用)を計画する
- ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)を活用し、業務効率化やデータ管理の一元化を進める。
- AIを活用して市場分析や業務自動化を推進し、経営企画のスピードを向上させる。
進捗管理ではなく進捗管理を企画する
- 経営企画室の役割は、単なる進捗管理ではなく、進捗管理の仕組みを企画し、KPIやOKRを設定して可視化すること。
- プロジェクトごとに適切なマイルストーンを設定し、経営陣や現場が一目で状況を把握できるようにする。
3. PDCAを回しながら改善を続ける
計画を立てたら、それを実行するだけでなく、定期的に振り返り、改善を続けることが重要です。PDCAサイクルを活用し、組織全体に新たな戦略を根付かせます。
新しい計画を組織に埋め込むスケジュール(パイロットも含む)を立案する
- 最初から全社展開せず、パイロットプロジェクトとして小規模な導入を行い、成功事例を作る。
- 成功事例を基に、計画のブラッシュアップを行いながら徐々に展開する。
社員さんに会社が進んでいく未来を示す検討会を繰り返す
- 新しい戦略やビジョンを社内に浸透させるために、定期的に社員参加型のディスカッションを実施する。
- 社員が自分ごととして戦略を捉えられるようにし、主体的に行動できる環境を作る。
スタート前に全社的に新しいやり方に変わっていく意識を持ってもらう
- 計画を発表するだけでなく、新たな方向性への共感を得るためのコミュニケーションを重視する。
- 経営陣が率先して変化を体現し、社員が安心して変革に取り組める環境を作る。
計画をスタートして定期的なレビューを行う
- 定期的に戦略の進捗状況を確認し、必要に応じて修正を加える。
- PDCAサイクルを回し、より実効性のある戦略にアップデートしていく。
まとめ
経営企画室は、未来のビジョンを描き、戦略を具体化し、実行と改善を繰り返すことで、企業の成長を支える存在です。特に、人口減少や市場変化に適応しながら、新しい事業機会を創出する役割を担い、社員とともに持続可能な未来を構築していきます。