目次
後継者育成の本質的課題-データ掌握vs人心掌握の両立困難
従来の事業承継では、後継者は①膨大な経営データの把握、②複雑な業務プロセスの理解、③人間関係の構築を同時に行う必要があり、多くが挫折しています。開発中の智将KIは「データの操縦席」により経営情報を一元化し、先代社長の思考をAI化することで、後継者が最も重要な「人心掌握」に集中できる環境の実現を目指しています。
前回のおさらい:イタリアンレストランのシミュレーション
前回、年商1億円のイタリアンレストランで、智将KIによるERPデータ積み上げ式シミュレーションの構想をご紹介しました。メニュー戦略・時間帯戦略・客席戦略の統合により、売上を1億3,688万円(対前年比136.9%)まで向上させる具体的計画の立案方法を提案しました。
今回は、このようなデータ統合システムが「事業承継」という中小企業の重要課題にどのように貢献できるか、実際のクライアントから聞いた課題と、智将KI開発チームが目指す解決策をご紹介します。
開発のきっかけ:あるイタリアンレストランオーナーの切実な相談
クライアントの声から生まれた開発テーマ
先日、創業25年のイタリアンレストラン「トラットリア・ソーレ」(仮名)のオーナーから、以下のような相談を受けました
【オーナー(62歳)の悩み】
「私はイタリアで3年修行して、この店を25年やってきました。娘(35歳)に継がせたいのですが、私の頭の中にある500人の常連客の好みや、仕入れの目利き、レシピの『勘所』をどう伝えればいいのか。娘は大手外食チェーンで店長経験もあり、経営の基本は分かっています。でも、『この店らしさ』を継承するのは本当に難しい。」
【後継者である娘さんの不安】
「父のようにはできません。父は常連さんの顔を見ただけで『今日はニンニク抜きね』と分かるし、市場で野菜を見ただけで『これは良い』と判断できる。レシピも『適量』『少々』ばかりで、同じように作っても『何かが違う』と言われます。データ管理は得意ですが、父の『感覚』は継承できません。」
この相談が、智将KIの事業承継機能開発の重要なきっかけとなりました。
見えてきた事業承継の3つの壁
【第1の壁:散在する経営情報】
オーナーとの詳細なヒアリングから、以下の情報がバラバラに存在していることが判明
オーナーの頭の中にある情報
• 常連客の好み(山田さんはニンニク抜き、鈴木さんは辛め)
• 仕入先との関係(〇〇青果の大将とは20年来の信頼関係)
• スタッフの特性(田中は接客は苦手だが仕込みは完璧)
• 季節メニューのタイミング(桜の開花と共に春メニュー開始)
• 秘伝のレシピの「感覚」(トマトソースの煮込み加減、パスタの茹で具合)
各所に散らばるデータ
• レジ:日々の売上データ(メニュー別集計なし)
• ノート:予約台帳(手書きで検索不可)
• Excel:仕入れ記録(オーナーだけが理解できる独自形式)
• 紙:レシピ(分量が「適量」「少々」の職人仕様)
• オーナーの頭:レシピにない「隠し味」と「タイミング」
【第2の壁:経営判断基準の不明確さ】
実際にあった判断の相違
事例:30名の団体予約への対応
• 予算:一人3,000円のコース
• 日時:土曜日の夜(最繁忙時間)
• 要望:2時間制限、特別メニュー対応
娘さんの判断: 「土曜夜の通常売上15万円を、9万円の団体で埋めるのは赤字」
オーナーの判断: 「この団体の幹事は地元企業の社長。今回受ければ、忘年会につながる。目先の利益より、長期的な関係構築が大切」
このような判断基準の違いが、日々の経営で頻発していました。
【第3の壁:人心掌握の時間不足】
娘さんの現在の1日(承継準備期間中)
• 5:00-7:00:父と市場で仕入れ修行
• 8:00-10:00:仕込み作業
• 11:00-14:30:ランチ営業
• 14:30-16:00:売上集計、発注作業
• 17:30-22:00:ディナー営業
• 22:00-24:00:片付け、父との振り返り
問題:スタッフや常連客と話す時間がほぼゼロ
智将KI開発チームが目指す「データの操縦席」構想
パイロットの操縦席からヒントを得た設計思想
飛行機のパイロットは、操縦席に座ることで全ての飛行データを一望し、安全な運航判断ができます。同様に、経営者・後継者も「データの操縦席」に座ることで、経営の全体像を把握できるシステムを開発中です。
【開発中の機能構想】
リアルタイムダッシュボード(開発進捗70%)
• 売上・利益・資金の現在状況
• 受注・生産・在庫の稼働状況
• 顧客動向・社員稼働率
• 異常値の自動アラート
統合データベース(開発進捗60%)
• 過去データの一元管理
• 顧客別・商品別・部門別分析
• 季節変動・トレンド分析
• 成功・失敗パターンの蓄積
シミュレーション機能(開発進捗50%)
• 「もしこうしたら」の即座計算
• 複数シナリオの同時比較
• リスク評価と対策提案
最も困難な挑戦:レシピの「感覚」をAI化する試み
【開発チームの悩み】
「レシピの数値化は想像以上に難しい。『焦げる直前の香り』や『あさりが開く音』をどうデータ化できない。環境要因の影響が予想以上に大きく苦戦しています。皆様からのアイデアもお待ちしています。」
先代社長の思考をAI化する挑戦
「勘と経験」は本当にAI化できるのか?
多くの経営者から「俺の勘は機械には分からない」という声をいただきます。しかし、開発チームの仮説は異なります。
【開発チームの仮説】
「勘と経験」の多くは、実は過去のパターン認識と成功・失敗の学習結果ではないか?
協力企業の協力を得て、過去の意思決定データ(受注判断、価格決定、人事配置など)を収集・分析し、判断パターンの特定とAI学習モデルの構築を実験中です。
開発中の承継支援機能
定型業務の自動化(開発進捗65%)
【目指している自動化機能】
飲食店の日次業務を例に開発中
• 売上データの自動集計と異常値検知
• 在庫と仕入れ量の自動計算
• シフト作成の自動提案
• 月次レポートの自動生成
【現在の課題】
「POSシステムや在庫管理システムとのデータ連携に苦労しています。各メーカーのAPIが異なるため、汎用的な連携方法を開発中です。」
【開発への期待の声】
「父は『あの人にはこう接しろ』というアドバイスをくれるが、その理由が分からない。AIに理由も含めて学習させてあれ゛は、自信を持って対応できる」(後継者の方より)
業種別に見る事業承継の課題(皆様の声を集めています)
製造業の事業承継課題
クライアント企業から聞いた課題
• 「職人の技術をどう数値化するか」
• 「取引先との長年の信頼関係の引き継ぎ」
• 「設備投資タイミングの判断基準」
開発チームからの質問: 製造業の皆様、技術継承で最も困っていることは何ですか?
サービス業の事業承継課題
クライアント企業から聞いた課題
• 「顧客一人一人への対応方法の継承」
• 「スタッフのモチベーション管理ノウハウ」
• 「価格設定の『さじ加減』」
開発チームからの質問: サービス業の皆様、お客様との関係性をどのように引き継ぎたいですか?
小売業の事業承継課題
クライアント企業から聞いた課題
• 「仕入れの『目利き』の伝承」
• 「季節商品のタイミング」
• 「常連客の購買パターン把握」
開発チームからの質問: 小売業の皆様、仕入れノウハウの継承で工夫されていることはありますか?
よくある質問と開発チームの回答
Q1: 智将KIはいつ完成しますか?
A: 2025年10月から、β版テストにご協力いただける企業様に、一部機能を先行してお試しいただく予定です。現在、テスト協力企業を募集中です。
Q2: レシピや技術の「感覚」は本当にAI化できるのですか?
A: 正直なところ、100%の再現は困難だと考えています。しかし、現在の実験では70-80%程度の再現は可能になってきています完璧ではなくても、後継者の学習期間を大幅に短縮できることを目指しています。皆様の「こんな感覚をデータ化したい」というご要望をお聞かせください。
Q3: 先代が智将KI導入に反対しそうです。どう説得すればよいですか?
A: 開発段階から多くの先代経営者にご意見を伺っていますが、「自分の知恵を否定される」と感じる方が多いです。そこで、智将KIは「先代の知恵を永続的に残すツール」として位置づけています。実際、協力いただいている経営者からは「自分の判断が分析されて面白い」という声もいただいています。
Q4: 導入費用はどの程度になりますか?
A: まだ確定していませんが、中小企業でも導入可能な価格設定を目指しています。初期費用を抑え、月額制での提供を検討中です。また、事業承継に関する補助金の活用も可能になるよう、関係機関と調整を進めています。
Q5: うちの業界特有の課題にも対応できますか?
A: 現在、様々な業種の企業様から課題をお聞きして、開発に反映させています。業界特有の課題こそ、ぜひお聞かせください。皆様の声が、智将KIをより実用的なシステムにします。
開発チームからのお願い:皆様の課題をお聞かせください
特にお聞きしたい事業承継の課題
1. 技術・ノウハウ継承の具体的な悩み
o どんな「感覚」や「勘」の継承に困っていますか?
o 言語化できない技術とは何ですか?
2. 経営判断基準の継承
o 先代と後継者で判断が分かれる場面は?
o どんな判断基準を残したいですか?
3. 人間関係の引き継ぎ
o 顧客との関係性継承の工夫は?
o スタッフとの信頼関係構築の秘訣は?
4. データ管理の現状
o 現在使用しているシステムは?
o データ化できていない重要情報は?
ご意見はこのページの下部、「メールでのお問合せ」よりお送りください。
お問合せ項目は「その他」で結構です。業種、従業員規模、具体的な課題をお書きください。
次回予告:智将KI開発の最新状況報告
【11月上旬配信予定】 「智将KI開発の壁 – なかなかうまくいかない現実と新たな挑戦」
次回は、開発の最新状況をお伝えします
• 他のシステムとの接続の壁:既存システムとの連携が想像以上に困難
• 手間が増えてしまう本末転倒の壁:効率化のはずが逆に作業が増える問題
• シミュレーションから実行へ定型化の壁:計画を実行に移す仕組みづくりの難しさ
• 人手不足の中小企業の並行処理を無くす壁:新旧システムの二重運用回避の課題
• コストの壁:中小企業が導入可能な価格実現への挑戦
この記事のまとめ
【重要なポイント】
1. 智将KIは現在開発中:2025年10月からβ版テスト開始予定
2. 事業承継の3つの壁:情報散在、判断基準、時間不足
3. データの操縦席構想:経営情報の一元化を目指す
4. レシピのAI化に挑戦:感覚の数値化という難題
5. 皆様の声が必要:実用的なシステム開発のため
【次のアクション】
智将KIは、皆様と一緒に作り上げるシステムです。事業承継でお困りの点、「こんな機能があれば」というアイデア、「これは無理だろう」という疑問、すべてお聞かせください。
読者の皆様へ
この記事を読んだ経営者の方で、事業承継に関する課題や、智将KIに期待する機能があれば、遠慮なくご意見をお寄せください。
大企業にしかできなかった経営を、私たちが開発中の智将KIによって、中小企業経営者のものとすることが私たちの目標です。
特に以下のような方のご意見をお待ちしています
• 3-5年以内に事業承継を予定している経営者
• 後継者として不安を感じている二世・三世経営者
• 「うちの業界では無理」と思っている方
• 「こんな機能があれば革命的」というアイデアをお持ちの方
皆様の声が、智将KIをより良いシステムにします。一緒に、中小企業の事業承継問題を解決していきましょう。
監修者

宮澤 博
税理士・行政書士
税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士
長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、 お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、 他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。