はじめに:技能実習生と特定技能の制度とは?
A社長:「技能実習生と特定技能の違いについて詳しく知りたいのですが、何が大きく違うのでしょうか?」
私たち:「技能実習制度は、日本の技術を発展途上国の人材に習得させる目的で設けられた制度です。一方で、特定技能制度は人手不足が深刻な業種で即戦力となる外国人労働者を受け入れるための制度です。」
1. 技能実習制度の歴史と目的
技能実習制度は1993年に創設され、「開発途上国への技能移転」を目的として始まりました。この制度では、日本の企業が技能実習生を受け入れ、実習を通じて技術を指導し、母国に持ち帰って活用することを前提としています。
主な特徴
- 受け入れ目的:技能習得と帰国後の母国での活用。
- 在留期間:最長5年。
- 対象業種:農業、建設、製造業、食品加工、介護など約80職種。
- 受け入れ方法:監理団体(協同組合や商工会など)を通じて実習生を受け入れる。
- 転職:原則不可。
- 監督機関:外国人技能実習機構(OTIT)が指導・監督を行う。
制度の課題
- 技能実習生が労働力として扱われるケースがあり、本来の「技能移転」の目的が形骸化している。
- 低賃金・長時間労働の問題が指摘されている。
- 日本語能力が低いため、業務指示が通じにくいことがある。
2. 特定技能制度の創設と目的
特定技能制度は2019年4月に施行され、日本国内の深刻な人手不足を補うために作られました。技能実習制度とは異なり、特定技能では「日本での長期的な就労」が認められる場合があります。
主な特徴
- 受け入れ目的:即戦力としての労働力確保。
- 在留期間:特定技能1号(最長5年)、特定技能2号(更新可・家族帯同可)。
- 対象業種:介護、外食業、宿泊業、建設業、製造業など14業種。
- 受け入れ方法:企業が直接採用または登録支援機関を通じて受け入れ。
- 転職:同一業種内で可能。
- 監督機関:出入国在留管理庁が監督。
制度のメリット
- 企業が必要とする即戦力を確保しやすい。
- 業務に必要な技能試験と日本語試験の合格が義務付けられており、一定のスキルを持つ人材を確保できる。
- 一定の条件を満たせば、特定技能2号への移行が可能で、長期的な就労が可能。
3. 最近の改正と変更点
技能実習制度の見直し(2024年改正予定)
政府は技能実習制度の廃止・見直しを検討しており、より柔軟な「育成就労制度」への移行が予定されています。これにより、技能実習制度の「技能移転」という名目から「労働力確保」に重点が移り、外国人労働者がより適切に受け入れられるようになります。
- 新制度では転職が一定条件下で可能になる。
- 技能実習生が適切な待遇を受けられるよう、監督体制が強化される。
- 日本語能力の向上支援が強化され、よりスムーズな業務遂行が期待される。
特定技能制度の拡充(2023年改正)
- 特定技能2号の対象業種が拡大される予定。
- 登録支援機関の役割強化。
- 資格取得プロセスの簡素化。
4. どちらの制度を選ぶべきか?
比較項目 | 技能実習 | 特定技能 |
目的 | 技能習得・母国への技能移転 | 日本国内での即戦力としての就労 |
在留期間 | 最長5年(1~3年+2年延長可) | 1号:最長5年 / 2号:更新可能 |
転職 | 不可 | 業種内で可能 |
日本語能力 | 基本的な日常会話レベル(N5~N4) | 業務に必要なレベル(N4以上) |
対象業種 | 80職種 | 14職種(今後拡大予定) |
監理体制 | 監理団体が管理 | 出入国在留管理庁が監督 |
5. 企業が採用する際のポイント
技能実習生を選ぶ場合
- 長期的な人材育成が目的なら適している。
- 受け入れには監理団体との連携が必要。
- 日本語能力は比較的低いため、指導体制が必要。
特定技能を選ぶ場合
- 即戦力が必要な場合は特定技能が適している。
- 転職可能なため、より高い待遇や環境を提供することで定着率を向上させられる。
- 日本語能力試験が課せられているため、一定の意思疎通が可能な人材を確保できる。
まとめ:企業のニーズに応じた選択が重要
A社長:「技能実習と特定技能では目的や管理体制が大きく違うんですね。」
私たち:「そうですね。長期的な育成を重視するなら技能実習、一方で即戦力を求めるなら特定技能が適しています。また、今後の制度変更も視野に入れながら採用計画を立てることが大切です。」
A社長:「企業としても、どちらの制度を活用するのが最適なのかしっかり考えていきます!」